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在宅医療はどのような人が受けられるか。[結論:通院困難な方なら誰でも受けられます!]

もしあなたや家族が病気で、病院の通院が困難になってきた時、お医者さんに家に来てもらう医療があります。

それが在宅医療です。

普段の住み慣れた部屋や家族に囲まれながら過ごし、必要に応じて自宅で医療を受ける事ができます。

さて、この在宅医療を受けるには、どのような条件の方が受けられるのでしょうか。

在宅医療は基本的に通院困難な方なら誰でも受けられます。

在宅医療を受けられる条件とは・・・

それは、ずばり

「通院困難な方なら誰でも在宅医療を受けることができる!」のです。

病気の種類や要介護度、年齢などは関係ありません。

もう少し詳しく説明していきます。

 

保険診療上、在宅医療の対象は「在宅で療養を行っている患者であって、疾病、傷病のために通院による療養が困難なもの」とされています。

つまり「病気の治療は必要だけど、外来に通うのが難しい人は、在宅医療を受けられますよ」ということです。

ここでポイントなのは病気の種類は関係がないということです。

在宅医療というと、ガンの終末期の方や、高齢で老衰が進み寝たきりになった方しか受けられないイメージがあるかもしれません。

しかし、そんなことはありません。

病気は“糖尿病”であっても、“高血圧”であっても構わないのです。

さらにはもちろん“交通事故の後遺症”や“老衰”であっても構いません。

継続して薬の処方や治療が必要で、本来なら病院の外来に行かないと行けないけど、通院ができないという状態であれば良いのです。

大事なことなので繰り返しますが、

もとの病気が何であれ、「治療が必要だけど病院に通院できない」という方は在宅医療を受けることができる。

ということです。

「通院できない」ってどうやって判断するの?

では「通院できない」というのはどうやって決めるのでしょうか。

それは、最終的に“医師の判断”で決まります。

決して「介護保険で要介護4だから」とか、「身体障害者手帳2級だから」などの条件は必要ありません。

患者さんを総合的に判断して、医師が「通院できるかできないか」を判断するのです。

 

たとえば、

“病院で糖尿病の薬をもらっていた患者さんが、年を取って足の筋力が落ちてきたため、自分で歩けず通院できなくなった場合”
はどうでしょうか。

もちろん、自分で通院することはできませんので「通院困難」と判断し、在宅医療を受けることができます。

 

では、

“病院で糖尿病の薬をもらっていた患者さんが、高度の認知症のため通院を拒否するようになり、どうしても病院に連れて行くことができない場合”
はどうでしょうか。

この患者さんは、糖尿病の薬を続けないといけないのですが、認知症のため通院拒否されています。

このような場合、もし患者さん自身の足の筋力が十分歩行可能なレベルであったとしても、総合的に判断して「通院困難」と判断する可能性が高いと思われます。

(もちろん、この患者さんがなぜ通院を拒否しているかをしっかり確認し、ご家族と在宅医療を入れてでも治療が必要なのかは慎重に考えなければいけませんが。)

 

このように、私達医師は患者さんの病状・家庭環境・介護環境なども考慮して総合的に「通院困難」かどうかを判断します。

とはいえ、その“医師の判断”というものは、世の中の人が思う「通院は難しそうだなぁ」という一般的な感覚とおおよそ一致しているように思われます。

本人やご家族が「通院は難しくなってきたなぁ」と思った時が、在宅医療のタイミングかも知れません。

もちろん年齢や要介護度も関係ありません。

そして、年齢についての制限もありません

若年者のガンの方であったり、障害のある小児の方も、もちろん在宅医療を受けることができます。

また、介護保険や身体障害者などの等級も関係ありません

もちろん介護保険の等級により、利用できる介護サービスの量が変わるため、介護環境を整える意味で重要ではありますが、在宅医療を受けられるかどうかとは別の話です。

具体的にはこんな方は在宅医療を受けられます。

以上のように、「通院困難な方なら誰でも在宅医療を受けることができる!」ということを説明してきましたが、参考までに具体例を示しておきます。

・高齢で足腰が弱って歩けない。
・末期ガンだが、最期は家で過ごしたい。
・事故による頸髄損傷で車イスを自分で動かせない。
・いつも通院を介助してくれていた家族が亡くなったので通院できない。
・独居だが、認知症がすすみ自身で通院できなくなった。
・患者が認知症になり、通院を拒否している。
・子供が先天性の病気で寝たきりになっている。

などです。

このように病気だけでなく、周囲の介護環境などが理由で在宅診療が始まるケースも多々あります。

ただし、こんな方は原則在宅医療が受けられません。

ここまで説明してきて、「通院困難な方なら誰でも在宅医療を受けることができる」ということは理解いただけたと思います。

しかし、ここでは在宅医療が受けられないケースというのを考えたいと思います。

保険診療上、在宅医療を受けられないケースというのは大きく以下の2つです。

① 自力もしくは家族の介助で通院が可能な方
② 医師の常在が義務付けられている施設に入院・入所している方

①の「自力もしくは家族の介助で通院が可能な方」というのは、先程から説明している「通院困難」ではない方なので、理解しやすいと思います。

 

ちなみに一つ補足をしておくと、「家族の介助で通院が可能」という状態ですが、これもケースによって判断は変わります。

例えば、患者さんは自分で歩くことはできませんが、車椅子に自分で移ることはでき、同居の家族が車椅子を押して通院できれば、「通院可能」と判断できるかもしれません。

ただし、車椅子に移乗するのに数人がかりでないと移乗できないような場合だと、現実的に毎回外来通院するのはかなり難しくなります。

また、家族が遠方に住んでいて毎回通院の介助のために数時間かけてやって来ないといけない場合も、定期的な通院は困難と判断されます。

こういった全体像をみて、医師が通院可能かどうかを判断しますので、悩まれる場合にはかかりつけ医に相談してみてください。

 

もうひとつ、在宅医療を受けられないケースが、②「医師の常在が義務付けられている施設に入院・入所している方」です。

「医師の常在が義務づけられている施設(=医者が常にいないといけない施設)」というと、医療機関で言えば「病院」です。

当たり前ですが、病院に入院している間は、在宅医が病院に訪問して診療することはできません。

すでに病院には治療を行っている医師がいるからです。

これは医師が常在している介護施設でも同様で、介護老人福祉施設(老健)や特別養護老人ホーム(特養)などがそれにあたります。
(注:特別養護老人ホームは特殊なケースでは在宅医療の介入ができる場合もあります。)

逆に、医師が常在していない介護施設(サービス付き高齢者専門住宅、有料老人ホーム、グループホームなど)は在宅医療を受けることができるということになります。

とはいえ、ご家族自身がこれらを判断するのは非常に難しいと思われますので、施設入所中の方に関しては、一度各施設に確認してみましょう。

まとめ

・通院困難な方なら誰でも在宅医療を受けることができる。
・病名、年齢、介護度などは関係ない。
・医者が常にいる施設では受けられないことがある。

いかがだったでしょうか。

想像していた以上に、在宅医療の入り口は広かったのではないでしょうか。

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